「質問リストをください」と言われることがあります
社長インタビューの質問例、みたいな記事はたくさんあります。検索すると制作会社のブログが並びます。創業のきっかけ、大切にしている価値観、今後の展望。だいたいどこも同じです。
うちにもリストはあります。ただ、それを配っても、たぶん同じ話にはなりません。
理由は単純で、うちの質問は毎回ゼロから作り直しているからです。汎用の12問みたいなものは持っていません。1社につき20問以上、その会社のことを調べてから作ります。
必ず聞く質問は、ひとつだけです
全社共通で聞くのは、これだけです。
「このまちで、なぜ続けるのか」
出ようと思ったことはなかったですか、と続けます。ほとんどの社長が一度は考えています。考えたうえで残っている。その理由が、その会社の一番深いところにあります。
残りの20問は、この1問に本当に答えてもらうための助走です。いきなり聞いても「地元が好きだから」で終わります。
数字を1つ拾うと、質問が3つ増える
先日、ある会社の取材準備で、社内の育成制度が31年続いていることに気づきました。会社案内に1行だけ書いてありました。
31年です。人を育てる取り組みを、31年続けている会社が、その土地にある。
用意した質問はこうなりました。
・これまでに何人が卒業されたんですか
・今も動いていますか
・具体的に何を、どうやって教えているんですか。誰が教えるんですか
・そこから育った方は、今どこで何をされていますか
準備の段階で立てた見立ては、「この会社の一番大きい資産が、外から見えていない」でした。31年で育てた人の数は、求人票にも会社案内にも載りません。載っていないものが一番強い、ということがよくあります。
「無いもの」を探す
事前準備でいちばん時間を使っているのは、普通あるはずなのに無いものを探す作業です。
営業部門が無い。求人広告を出していない。社名の入った看板や車が無い。支店を出していない。
無いということは、どこかで「やらない」と決めた人がいるということです。決めた理由が、その会社の性格そのものです。だから無いものを見つけたら、必ず「それ、なぜやらないんですか」を用意します。
質問を作る手順
1. 調べる(60〜90分) — 会社サイト、施工事例、求人票、動画、地元紙、商工会議所の名簿
2. 数字を拾う — 年数・人数・件数。全部書き出す
3. 数字に「なぜ」をつける — 「31年」→「31年続けられたのはなぜか」「やめようと思ったことはないか」
4. 無いものを探す — 営業部門、求人広告、看板。無いものには決断がある
5. 20問に並べる — 冒頭は事実確認、真ん中で決断、最後に「このまちで、なぜ続けるのか」
6. 捨てる前提で持っていく — 順番どおりに聞かない。返ってきた答えを追う
用意した質問の8割は、たぶん使いません。使わないのに作るのは、追いかけるべき答えが来たときに、それが追いかけるべき答えだと気づくためです。何も調べずに聞いていたら、雑談として流してしまいます。
取材の当日と、そのあと
取材時間は60分前後です。公開までは1ヶ月くらいかかります。書き起こして、構成して、本人に読んでいただいて、直して、それから出します。
質問を20個作るのは、その1ヶ月の最初の90分です。ここを飛ばすと、あとの1ヶ月が全部「よくある社長インタビュー」になります。
自社でやってみたい方へ
上の手順はそのまま使ってもらってかまいません。1社分の質問表を作るのに、慣れても90分かかります。それでやってみて、思ったより大変だと感じられたら、うちが取材に伺います。取材費も掲載費もいただきません。


