「世の中の役に立ちたいなら、うちへ来い」運送業のイメージを変える女性社長の挑戦

代表武藤 里佳

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「こんな仕事に」という言葉に引っかかった

有限会社DREAMKEIは、東京都江東区に拠点を置き、一般貨物輸送を手がける運送会社だ。運送だけでなく倉庫関係の仕事や、野菜・果物の買い付けといった事業にも取り組んでいる。代表の武藤里佳氏は現在50歳。27歳で会社を立ち上げ、創業から23年が経った。

運送業との出会いは、大学4年生のときだった。3年生までに単位を取り終え、4年生の1年間がまるごと空いた。もともと車が大好きだった武藤氏は、その1年に何をしようかと考え、運送会社でアルバイトをすることにした。

今から30年近く前のこと。当時、トラックの仕事をする女性はほとんどいなかった。面接に行くと、相手はひどく驚いた様子で、なぜわざわざ4年制大学の学生が、しかも女性でこんな仕事に応募してきたのかと尋ねたという。

「こんな仕事って。だってこれってすごく縁の下の力持ちで、なくてはならない仕事で、すごくいい仕事なのに、働いてる人自体がそういう言い方をするんだなって思ったのが初めでした」

その会社にとっても、女性のアルバイトは初めてだった。女性を入れたことで評価されるのか、それとも「女性だとちょっと」と思われてしまうのか。会社にとっても実験のようなものだったと武藤氏は振り返る。

働き始めてからも、周囲の視線は同じだった。当時は「免許さえ持っていれば誰でもできる仕事」「トラックの運転手はちょっと怖い」というイメージが根強かった。ところが、武藤氏が大学生で、就職前にアルバイトをしているだけだとわかると、相手の態度がころっと変わったという。

運送業のイメージを変えたくて、27歳で起業

運送業にそんなイメージがあるのなら、変えたい。武藤氏にはもともと、会社を立ち上げたいという思いがあった。

「将来の夢は?って聞かれたときに、普通はピンポイントでこれになりたいとか言うけど、私は元々、将来の夢が社長だったんで」

実家は電気店で、父親が長く商売を営んでいた。小さい頃から商いのある暮らしに慣れていたことが、物心ついた頃からの「社長になりたい」という思いにつながったのだろうと武藤氏は話す。

ただ、運送会社を立ち上げるには、トラックをはじめ多くの資金や準備が必要になる。武藤氏は大学卒業後の4年ほど、いくつかの運送会社で働きながら、どんな会社があるのかを見てまわった。その働きぶりが目に留まり、佐川急便からスカウトを受けたこともある。女性の幹部をつくりたいという時代で、当時の月給で80万円を出すという話だった。

「お金になびくことじゃなかったから。自分でやろうと思ってたから、いや、すいません、興味ないんで大丈夫ですって。とにかくイメージを変えたかったの」

資金を貯め、27歳で会社を立ち上げた。4年間、その思いが揺らぐことはなかったのかと尋ねると、「あんまり思わないかな」と笑う。周りからはしんどく見えるかもしれないが、自分がしんどいと思ったことは一度もないという。

それでも一番悩んだことを挙げるなら、スタッフの給料だった。給料には正解がない。創業から2〜3年は売上もお客さんも少なく、決して高い給料を払えなかった。そこから、ある時期に思い切って水準を引き上げるなど、試行錯誤を重ねながら今の形をつくってきた。

ピラミッドの上と直接付き合う

DREAMKEIの大きな特徴は、仕事の取り方にある。世の中の仕事の多くは、ピラミッドの形になっていると武藤氏は説明する。一番上で仕事を受けた会社が、それを下へ下へと振り分けていく。運送業も同じで、大手が自社ではやりたくない大変な仕事を下へ回し、元は5万円だった仕事が、末端に届く頃には1万円になっていることもある。多くの運送会社は、営業力がないためにこのピラミッドの下の方と付き合い、降りてくる仕事を受けているのだという。

「うちの場合は、そのピラミッドの上と付き合ってるんだよね」

DREAMKEIは、荷主である商社などから直接仕事を受けている。そのため、スタッフは自分がどこの商材を運び、どんな仕事に関わっているのかが見える。ドライバーが荷主のもとへ行って話をし、そこから新たな仕事が生まれることもある。

武藤氏はもともと「運送会社とはこういうもの」という業界の常識を持っていなかった。自分は自分、人は人というスタイルで生きてきたからこそ、既存の構造にとらわれない仕事の取り方ができたという。運送業の業界団体には属していない。唯一入っているのは一般企業が集まる会で、そこにいるのは商社をはじめとする荷主ばかりだ。

「初めから仕事くださいとは言わないんで。飲んで騒いで、仲良くなって、ある時に真面目な話をして、じゃあ仕事しようか、みたいな感じで広がってきてる部分が一番大きいかな」

一般の人が思い浮かべる運送会社は、宅配便のように、自分たちが直接接する仕事かもしれない。しかし企業間の物流が何をしているのかは、世の中にはあまり知られていない。運送会社で働くスタッフでさえ、自分が何を運んでいるのか知らないことも多いと武藤氏は言う。

「ただ運んでるだけじゃない。本当の意味で、世の中の人とつながってるなっていうのが、やりがいですね」

運送業経験者は採らない。コミュニケーションが仕事の核

採用にも、DREAMKEIならではの方針がある。運送会社の経験者は、基本的に採用しない。スタッフの多くは、サービス業や営業の経験者だ。

「黙々とただ運転して、どっか行って、そこで荷物をただ下ろして終わりっていうような仕事じゃないんで」

荷主と直接やり取りをするからこそ、コミュニケーションが欠かせない。お客さんとのやり取りが大好きな人たちが集まっているという。逆に、運送の世界しか知らない人は、DREAMKEIの仕事に入るとすぐに辞めてしまうそうだ。

求人でも、福利厚生を売りにすることはしない。転職フェアに出展した際も、あえてその話は一切しなかった。休みなどは、企業として当たり前のことを当たり前にやれば済む話であり、それを売りにするのは違うと考えているからだ。

会社のホームページからは、若いスタッフの一日の仕事ぶりを伝えるYouTube動画も見られる。それを見て「自分にはできなさそう」と辞退する応募者もいるが、武藤氏はそれで構わないという。入ってから「こんなはずじゃなかった」ということは、うちにはないと思う、と話す。

その結果、人が集まらずに困ることはあまりない。そろそろ何人か欲しいと思った頃に、自然と人が来るという。現在の社員は16人。一番長いスタッフは18年在籍しており、10年、15年と勤める人がほとんどだ。若手も3〜4年と働き続けていて、今は27歳のスタッフが会社全体を仕切っている。

水槽はきれいに。家族のような会社をつくる

3年ほど前、武藤氏は大きな決断をした。会社に悪い影響を与えていると感じた幹部を含む5人に、一度に辞めてもらったのだ。当然、売上は1億円以上落ちた。それでも、後悔はしていない。

「水槽が濁ってるとさ、新しい金魚を入れても濁っちゃうじゃん。やっぱり水槽はきれいにしとかないと。そうすれば、どんな新しい魚を入れても、みんな伸び伸びと泳いでくれるんで」

今いるスタッフは前向きな人ばかりだという。「何でもやってみよう」という発展途上の会社で、若いスタッフは武藤氏の背中についてきてくれる。面接の最後には、必ず「私のこと好き?」と聞く。このテンションが嫌なら、やめた方がいい。それが武藤氏流だ。

今後の展望についても、武藤氏は数字の目標を掲げない。会社には山もあれば谷もあり、ずっと上向きの会社はないと考えている。人の規模も、自然に増えるのなら増えればいい。年商も結果としてついてくるもので、扱う商材によって意味が違う以上、年商だけでは会社の規模はわからないという。

一方で、倉庫関係では全国展開の商材を扱っており、この仕事はこれから大きく増えていく見込みだ。16人の小さな会社に、大手の運送会社が「仕事をください」とやって来ることもあるという。他にはない事業をもっと前面に出し、まずは日本で会社を有名にしたいと語る。

「うちの会社のスタッフは家族だと思ってるから、すごく大切にしていきたいし、その若い子たちが家族をつくって、自分の子供を入れたい会社になっていきたい」

学生へ、世の中の役に立ちたいなら

最後に、学生へのメッセージを求めると、武藤氏は少し考えてからこう言った。

「世の中の役に立ちたいって、よく言うじゃん。だから、世の中の役に立ちたいと思うなら、うちへ来いって感じじゃない?」

若いスタッフを見ていて思うのは、年齢は関係ないということだ。若くてもしっかりしていて、「はい、喜んで」の精神で、愚痴ひとつ言わない。すごい人はすごいし、そうでない人はどこまで行っても変わらない。だからこそ、頑張る若い人の足を引っ張るような言動には、武藤氏ははっきりと物を言う。

現在は、来年4月をめどに高卒採用にも取り組んでいる。高校を卒業したばかりの人は「誰よりもまっさら」。免許などは入社してから一つずつ覚えればいい。会社のある江東区周辺の高校に情報を届けながら、準備を進めているところだ。元気な人たちが入ってくれば、20代のスタッフも、年配のスタッフも、もっと張り切るだろうと期待を寄せる。

「動かない人は本当に何も始まらないんで。だから私は、とにかくいろんなことに動くようにしてる」

「こんな仕事」と言われた運送の仕事を、縁の下で世の中を支える誇りある仕事へ。30年近く前に抱いた違和感を原動力に走り続けてきた武藤氏の言葉は、自分のノリが嫌いじゃなかったらぜひ来てほしい、というまっすぐな誘いで締めくくられた。

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