僕らがダイワ住研について知っていたのは、滋賀で注文住宅やリフォームを手がける工務店だということくらいだった。社長の和田さんが山口県の下関から来た人で、自分の会社を興すまでに十八年間、現場管理を続けていたこと。その歳月のことは、取材の前には何も知らなかった。
01 手に職をつけて、親元を離れる
出身は山口県の下関です。工業高校の建築科に進んだので、この業界をそのまま選んで、今まで来たみたいな感じですね。
今とはだいぶ違う時代でした。大学進学というよりも、手に職をつけて、親元を離れて働く。そういう時代だったんです。
高校を出て、最初は福岡の会社に行きました。ところが、その会社が傾いてしまって。
ちょうど第二次オイルショックのころで、大阪と地元で就職が決まりかけていたのに、不景気の煽りを食らって、寸前に就職先がなくなったんですよ。
そのとき、母の兄弟のおじが滋賀にいたんです。母がおじに相談してくれて、こっちに来たらどうか、と。最初は彦根に行きました。その会社が合わなくて、もう一度おじに相談したら、もう少し大きいところに行こうか、と地方ゼネコンを紹介してもらった。
そこで家内とも出会いました。だから今では、故郷よりもこっちのほうが近いんです。
02 社員を駒にする会社に、未来はない
その地方ゼネコンで、木造住宅の現場管理を十八年続けました。
ずっと見ていて、経営者の、社員さんに対する不公平な扱い方というのが、性格的にあまり好きじゃなかったんです。
個人を大事にしない。私自身は、その組織の中でモチベーションを上げれば伸びるのかもしれない。でも、会社という組織で考えると、あまり未来は明るくないな、と思いました。
そのころ家内と結婚して、子どもも授かっていた。このまま行くと、嫁と子どもたちを守り通すのは厳しいんじゃないか。
それで会社を辞めました。
辞めるとき、私が見つけて育ててきた大工さんに、自分はどうすると聞いたら、ついていく、という方が二人いたんです。その人たちに仕事を渡さなければならない。一時期は、本当に苦しかった。
創業して二年ほど経ってから、大手ハウスメーカーの下請け業務を受けるようになりました。それを七年前に卒業させてもらって、直接お客様とやり取りする形に切り替えて、今に至ります。
下請けを辞めた最大の理由は、はっきりしています。
大手でやっていると、社員がお客さんと直接会って喋るのはNGなんです。社員さんは、働く駒みたいな、部品みたいな、歯車みたいな形になる。やる気が芽生えない、成長できない。それが経営者として、心苦しかったんですよ。
03 他人の生活の中に、入らせてもらう
リフォームというのは、お客さんが住んでいるところに、身内でもない他人が入らせてもらって、生活の中に入らせてもらってやる仕事です。だから、信頼していただけない限り、成り立たない。
社員たち自身がきちんと立つことで、信頼関係ができて、お客さんから仕事をもらえる。
そして、代金をいただいた上に、ありがとう、頼んでよかった、という言葉を、現場の社員さんたちが聞ける。
それが、給金以外のやりがいという部分に繋がるんです。
人が成長するには、給金以外のやりがいが絶対に必要です。やりがいを感じることは、成長するエネルギーになりますから。それをいただける職業なので、すごくいいのかなと思っています。
お客さんは、決めたエリアに自社で作ったチラシをアナログで配って、僕らの存在を知ってもらうところから開拓しています。二年ほど前からは、縁のある会社にお願いしてSNSやウェブもやっていて、やっと問い合わせが出だした。目標は月に五件で、今は三件ほど。来年には達成できたらいいな、と思っています。
04 企業というのは、人やな
仕事って、一人ではできないじゃないですか。組織という形になると、社員さんがいてくれて初めて、お客さんにしっかり貢献できる。それがなければ、存在する意義も価値もない。
企業というのは人やな、というのは、この歳になってもつくづく思いますね。
うちの経営理念も、そこから来ています。住まい作りというのは、家族という最小単位の人たちが住まう場所を作る仕事です。その住まいがあって、家族があって、家族愛を育んで、幸せに暮らしていただく。その基盤を作る仕事なんです。
だから、我々自身が愛を含んで、幸せを分かち合うチームでないと、お客さんにしっかりお返しできない。企業にも家庭と同じで、一本のしっかりした軸がいる。それがないままだと、社員さんが惑うんですよ。
工務店の仕事は内需産業なので、三十年ずっと景気が冷え込んで、なかなか厳しい。でも、災害があると工務店の役割はとても重要になる。この地域の中で、工務店という立ち位置で役割を続けていかなければならないと思っています。
社員さんたちは、年齢とともに成長して、知見も蓄まっていく。その人たちが能力を活かせる場所を作り出してあげるのが、経営者の仕事だと思っています。
最後に、若い人へ。今は可能性が無限にある時代だと思うんです。ついつい自分で決めつけてしまいがちだけれど、決めずに、前向きに取り組んでほしい。今の若い子は、真面目で賢い子が多いと僕は思っています。
大切なのは、前向きな気持ちと、感謝の気持ちです。それを持って素直に生きていけたら、もっともっと飛躍するし、幸せになれる。
AIが普及しても、現場で汗水流して働く人は必要とされる。絶対に途切れることはない。ただ、昔のように先輩の姿を見て覚えろ、ではなく、会社が成長のロードマップを作りながら、社員さんと共に成長していく。そういう考えを持った経営者と出会って、その中で成長してもらえたらと思っています。決して、暗い時代じゃないと僕は思っているので。
取材: 島田大輝(ローカル文庫)
