今回お話を聞いたのは、株式会社西谷通信工業の代表の西谷文博さん。テレビやネットの線を引く通信設備の会社です。取材では、会社を継いだいきさつや、仕事の楽しさとしんどさ、若い人が入ってこない今の業界について聞きました。
「やっぱり、机で働いている人らよりも高くはしたいけど。」
01 もともとは、やらない、行かないって思った
親父が会社を起こしてやっていました
僕は二代目なんです。 その前に、うちの親父が会社を起こしてやっていました。
舞鶴は山間地域が多いんですよ。 普通にアンテナを上げても、テレビが映らない地域がたくさんあったんです。昔はね。 今は、eoとかNTTとかの線でテレビを見ている方も多いでしょうけど、元々はそういうのがなかったので。
その山間地域にテレビが映るようにする。 それが一番最初のスタートでした。 そこから、ケーブルテレビやホームファイバーが出てきて、そっち側に行き出した感じですね。
戻ろうと思ったきっかけは両親の病気
もともとはね、確かに、やらない、行かないって思ったんですよ。 でも、遊んでばっかりおってもしゃあないし。 京都でアルバイトばっかりしていた時期もありました。 それで、この業界に近いメーカーさんに就職したんです。大阪で、八年かな。
いい時期が来て、帰ろうかなと思って、この会社に入りました。
戻ろうと思ったきっかけは、両親の病気です。
社長は大阪のメーカーで八年働いたあと、両親の病気をきっかけに会社へ戻ったと話した。
02 物作ることは、最終出来上がった時かな
テレビが映るようになった瞬間
仕事で楽しいか、楽しくないかはわかんないけどね。 僕らからしたら、一番は大きい仕事が取れたときです。
現場で言ったら、工事が完了して、ちゃんと直ったとき。 テレビが映るようになった、ネットができるようになった瞬間とかね。 修理も一緒です。直した瞬間。 予想通りの修理だったとか、予想が外れて大変な目に遭ったとか、いろいろあるけど。 物を作ることは、最終、出来上がった時かな。やっぱり。
現場に行かないとわからないから
嫌なのは、やっぱり修理なんです。 故障しているものは、こっち側は現場に行かないとわからないから。 一応予想して、これかな、これかなって思いながら行くけど、とんでもないやつがあったりして。
ネットが映らない。機械の故障かな、線が切れてるのかな、雷かな。 これやろなって思っとったら、全然違う機械が壊れてるとか。 田舎の方で言ったら、動物が悪さしたとか。 それはないでっていうのは、たまにあるけどね。
雨の日も、基本はやります。 作業効率は悪くなるけど、予定があるんですよ。 伸びたらお客さんに対して次いつ?ってなってくるし、次の日にしたら、次の日に予定しとった人たちがまた遅れていくから。 なんなら夜もあるんです。ネットとかは、昼に止めたら大変やから、夜にしないといけない。
仕事の依頼は、舞鶴では自社が構築した施設の住民から、大きい工事では元請けから来ると、社長は話した。
03 線は貼れるけど、電柱を立てるのは苦手
一番はやっぱり工期やね
一番しんどいのは、仕事で言うたら、工期です。 自分たちでできない仕事、やりきれない仕事は、協力業者さんに来てもらってやるんだけど、工期がギリギリとか。 お客さんによっては条件が厳しかったりとか。
工期にどうやって間に合わすか。 それが間に合いそうにないやつが、一番しんどいかな。
うちでできるものは、うちでやります。 やりきれない物量のものだったら、協力業者さんに、ちょっと助けて、ってお願いする。 大きい仕事になると、どうしても自分たちだけではできないし。 同じ業種でも、得意や不得意があるんですよね。
「うちらで言ったら線は貼れるけど、その線を貼る電柱を立てるのは苦手。」
時代は変わってきてる
テレビの仕事は、昔までやったら九割ぐらいでした。 今だと五割ぐらい。 時代は変わってきてるんです。
テレビだけじゃなくて、ネットに関わるセンター系の工事とか、通信絡みとか。 何が一番かな。センターが一番多いかな。 あと、防災無線とか。そんなのもやっています。
テレビの仕事は昔の九割ほどから今は五割ほどになり、センター系の工事や防災無線も手がけていると、社長は話した。
04 一年おったら、七割ぐらいの仕事はできる
残り三割は、もう経験なのよ
このケーブル業界は、多分、一年おったら、七割ぐらいの仕事はできるんです。 ただ、残り三割は、もう経験なのよ。
わからないことを直していくとか、この時はどうしたら直せるとか。 この三割を身につけるのが、非常に難しい。 それをある程度理解して、お客さんや元請けさんと話ができるようになるには、今度は実績が必要になってくるんです。
元請けさんやお客さんに信用されるとなったら、やっぱり十年近くかかるのよね。 説明するのもね、適当に言うとるなって思われたら、本当のことを言っていても、あんまり信用されないとかさ。 そんな積み重ねがあるから、結構時間がかかる。 だから、仕事自体は一年でほぼほぼできるんですけどね。
痛い目に遭ったら、スッと覚える
その先は、その場で経験しないと説明もできひんのです。 言葉で伝えても、そういう場面が多々あるわけじゃないから、その子たちも忘れちゃうのよ。
修理の原因はいろいろあって、これがその原因です、っていう場面にならないと、なかなか教えることもできない。 具体的に説明したところで、現場に行った時に覚えているかといったら、覚えてないし。
やっぱり人間、痛い目に遭ったり、しんどい思いをしたら、スッと覚えるやん。 こんなことあった、とか。
「やっぱり人間、痛い目に遭ったり、しんどい思いしたら、スッと覚えるやん。」
05 若い子が入ってきてくれる。憧れてもらえたら一番いい
一年持たないのが多い
うちは、若い子が入ってこないかな。 今はもう、ほぼ四十ですね。みんな長いことやっています。
入ってきても、すぐに辞めちゃう。 一年持たないのが多いんです。 やっぱり、しんどいかなと思うけどね。体力面。 雨が降ってもやらなあかん、夜もある。
給料面で言ったら、ケーブル業界もなかなか厳しいよ。 ただ、パワハラはないけどな。他の会社さんは知らんけど。 うちら、結構、人の目にさらされるんです。 昔は、現場で「アホ、ボケ」と言われながらやっていたけど、そんなこと言うてたら、住民さんからも言われたりするし。 言葉遣いは、結構丁寧なのが多くなってきたね。
辞めるっていう選択肢はあんまなかった
会社に入って合わなくても、辞めるっていう選択肢は、あんまりなかったからさ。 入ったら、ここで勤めるもんだって思ってたし。 退職代行とか、いいなって思う反面、その頃が一番しんどかったもんね。
でも、そうやっていじめられた人と、今でも仲良しなんです。 電話したりするし、飲みに行ったりもするからね。
給料は高くなっていかないといけない
未来、か。そこが一番難しいな。 それはやっぱり、若い子が入ってきてくれる。 憧れてもらえたら一番いいけど、そこまでは言わんにして。 給料は、高くなっていかないといけないと思っています。 やっぱり、机で働いている人らよりも高くはしたいけど。
発信もしたいんだけどね。 社員は苦手なのが多いし、企業情報的なもので、映せるところが少なかったりするんです。 映したらダメって言われたりするんです。これはしたことがないから、本当に言われるかどうかはわからんけど。
図面とかは、なくすのはダメ。人に見せるのもダメだし、ネットに載せるのはもってのほか。
若い人の価値観が、よくわからないんですよ。 若い子の話を聞くの、楽しいもん。 そういう子たちを、どうしたらこっちに向かわせられるか。
取材では、山間地域にテレビを映すことから始まった仕事と、若い人が入ってこない今の業界の話を聞きました。
取材: 北尾祐仁/ローカル文庫編集部
いちばん心に残ったのは、「一年おったら、七割ぐらいの仕事はできる」のに、お客さんや元請けさんに信用されるまでには「十年近くかかる」という話です。本当のことを言っていても、適当に言っていると思われたら信用されない。仕事ができることと、信用されることは別なのだと初めて知りました。
もう一つは、テレビが映らない山の地域に、テレビを映すところから会社が始まったという話です。僕は、テレビは当たり前に映るものだと思っていました。その当たり前をつくってきた人が、地元にいたのだと思います。
西谷さんは、若い子が一年持たずに辞めてしまうことも、給料面が厳しいことも隠さずに話してくれました。「机で働いている人らよりも高くはしたい」という言葉に、自分はどう応えられるのか。まだ答えは出ていませんが、これから考えていきたいです。
