代表 村岡 括矢

トイレの詰まりから注文住宅まで。西脇で60年以上、地域に頼られる工務店の三代目

代表村岡 括矢

公開 取材・文 ローカル文庫 編集部

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代表 村岡 括矢
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ローカル文庫 編集部

六十年以上続く会社を、三代目として継ぐということ

株式会社七福建設は、兵庫県西脇市で六十年以上の歴史を持つ地元密着型の工務店だ。注文住宅から庭の工事、リフォームまでをお家にまつわる相談事を全て手がけ、地域の暮らしを支えてきた。現在の代表は三代目。自ら会社を立ち上げたわけではなく、受け継いだ立場である。

もともとは大阪の大手ゼネコンで長く働いていた。同じ建築業界とはいえ、そこでの仕事と地方の工務店の仕事はまったく性質が異なるという。

「大手のゼネコンは組織を相手に仕事をします。お家を作ったり、お庭をしたり、直接困られてる方々のお家に行ってリフォームをしたりっていう仕事は、同じ建築業界でも全く別物で」

会社を継ぐ予定があったわけではない。それでも西脇に戻ることを選んだ理由は一つではなかった。地域に貢献できるという思い。そして、もしかすると、自分が戻らなければ会社はなくなり、地元で働いている人たちの中に職を失う人が出てしまうかもしれないという想像、

「うちみたいな会社でも貢献できることが地元の中では割と大きくて、そういう役割を捨ててしまうっていうのがもったいないなっていうのも一つ」

そうしたことを総合的に考えたうえで、会社を守り、さらに良いものへと進化させていくことに興味を持ち、今の仕事に向き合っているという。

働きたい会社へ

会社に戻って最も苦労したのは、田舎ならではの人材確保だった。戻ってきた当時は本当に人がおらず、一人が休めば仕事が止まってしまうような状態だったという。

「誰か一人休んだら仕事ストップするなっていう状態だったから、まずその環境を変えるために働きやすい会社にしたり」

最初に取り組んだのは、働く環境そのものを変えることだった。事務所をお客さんや従業員が「働きたい」と思えるような場所に整え、組織としてのルールも、働きやすく、働きたいと思えるものへと作り変えていった。その結果、人が入り、仕事が安定して回るようになってきた。

後を継いだ経営者は信頼を得るまでが大変だという話をよく聞く。そう尋ねると、「信頼されてるかどうかっていうのは正直今でもわからへん」と率直に答えた。ただ、名前だけの経営者であれば、従業員や協力業者は離れていってしまう。そうならないための準備は周到に行った。

「業界が変われば新しい知識も必要なので、しっかりと勉強もしたし、企業姿勢をどうするかっていう方針もきっちりと細かく詰めたし、システムを自分の中で構築して、新しい会社に入るっていう準備はしましたね」

「割と大変やったかもね」と付け加えた一言に、当時の密度がにじんでいた。

どんなことでも大切に

同じ地域には他にも工務店があり、大手のハウスメーカーもある。その中で七福建設が選ばれる理由を尋ねると、返ってきたのは対応の幅の広さだった。

「どんなことでも大切にする。トイレの詰まりや障子の張り替えからフルリノベーションや注文住宅まで。設計力や施工力はもちろん、心からお客様に寄り添える社員が揃っている。」

建築の一番根っこの部分から、看板になるような華やかな仕事まで、何でも高いレベルでこなせると考えている。それが、多くの人に繰り返し頼ってもらえる理由だという。

もう一つの強みとして挙げたのが、会社の温かさだ。

「お客様にとってはすごくあったかい会社だと思います。人間も含めて地域の人たちに親しまれやすい。人柄であったりとか、親切さであったりとか、丁寧さであったりとか」

他の会社と比べたことはないから優れているかどうかは分からない、と前置きしつつ、「他の会社より劣ってるってことは絶対ないと思う」と言い切る。そこには、自社の人たちへの静かな信頼が感じられた。建築にとどまらず、カフェの経営も手がけていることも、地域との接点の広さを物語っている。

経営者として何より大切にしているのは、地域に貢献する会社であることを忘れないことだという。

「お金のことだけ、儲けのことだけ考えだすと駄目になるし面白くない。弊社に関わる全ての方々に喜んでもらう、そういう根っこにある部分を忘れないように仕事を続けていくことが大事なことで」

「声をかけておいたら安心」と言われる会社を目指して

人口が減れば、家を新しく建てたいという人は必ず減っていく。特に地方は、都会よりも人が減るスピードが早い。そうした中で仕事を取り、きちんとした会社経営を続けていくための目標は明確だ。

「地域の人たちが何か困ったときに、とりあえず私たちに声かけといたら安心っていう、そこまでの関係性と信用を地域と作っていくっていうのが目標ですかね」

そのために欠かせないと考えているのがAIの活用である。人が減り、物価が上がる中で、お客さんに無理のない範囲で商品を提供し続けるには原価を抑える必要がある。しかし人を増やせば原価は下がらない。だからこそ、今いる人間でできることを増やす。AIやSNSでの発信など、頭を使えば自分たちで簡単にできる仕組みが整ってきているという。

「知恵を使ってうまくやっていけば今はできることが増えてます。早いうちにそういう知識を取り込んで、経営に活かしていかないといけないなと思ってます」

経理や経営管理の資料づくりもAIを使えば早くなり、「今まで10かかってたものが1でできるようになりますよね、時間的には」と話す。取材中も、手元のiPadの裏で議事録を作るAIアプリを起動させていたという。これまで手でメモを打ち込んでいた時間がゼロになる。細かなところで上手に使えば、AIは大きな力になると実感している。「まだ勉強中ですけどね」と笑うが、その姿勢は驚くほど前向きだ。人が減っていく時代に、高効率に仕事を回しながらお客さんに良いものを届ける。そのための工夫を、今から積み重ねている。

職人という選択肢の魅力

業界全体として、職人は確実に減っている。伝統技術を学ぶ若い人がいないからだ。だからこそ、逆に今が好機だと語る。

「今から職人になったら、一生ご飯を食べていけると思う。AIに取られることもないし。」

もちろん泥臭い部分はある。汚れることもあるし、暑い中でも外で仕事をしなければならない。それでも、完成したときの達成感や、技術を持つ自分への自信を得られる、やりがいの大きな仕事だという。

「やりがいがすごくある仕事です。住宅に関しては都会より地方の方がやりがいのあるものづくりはしやすかったりするかもしれない。土地も広く使える利点もある。」

職人といえば、きつい、汚いという悪いイメージが昔からある。しかし実はそうではないと分かってもらえれば、ものづくりが好きな若者は一定数いるはずだと考えている。職人になりたいとふわっと思った若者が、ここに行けば学べる、ここで修行できるという窓口があり、地方の工務店と連携して修行先を紹介できる。そんな道筋が簡単なフォーマットとしてあればいい、と構想を語ってくれた。最近は工業高校などに職人を育てる学科もできてきており、若いうちから職人を目指す子はそうした道を選ぶのかもしれない、とも付け加えた。

七福建設としても、職人になりたいという若者がいれば受け入れる考えだ。学生の中で職人の魅力をもっと伝えてもらえるなら嬉しいし、必要であれば喜んで協力したい、とも話していた。

学生へ、二十代の頑張りは一生の貯金になる

学生のうちにやっておいた方がいいことを尋ねると、一人暮らし、遊び、そしてアルバイトの三つを挙げた。仕事はどうせ入ってから覚えるもの。だからこそ、学生の時にしかできないことをやっておく方がいいという。

「巡り合わせみたいなもんやから、いろんなとこ出かけていろんな人と出会って、学生時代は人脈広げたり遊んだりバイトしたりっていうのが一番。個人的には一人暮らしはしといた方がいいと思うな」

やりたいことが見つからないという学生も多い。そんな声にも、出会いは巡り合わせだからこそ、とにかく外に出て人と出会うことを勧める。そして、その先の二十代についてはこう語った。

「二十代に頑張った人が一番勝てると思いますね、その先。みんな頑張る余裕が無くなってくるからね、二十代。みんな頑張り切れていない時に頑張ったら、その貯金は一生続くと思います」

学生時代は視野を広げ、社会に出たら全力で打ち込む。大手ゼネコンから故郷の会社へ戻り、地域とともに歩む道を選んだ三代目の言葉には、その両方を経験してきた人ならではの重みがある。建築業に興味を持つ若者が増えるなら協力したい――取材の最後まで、学生への応援の気持ちを惜しまず伝えてくれた。

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