株式会社板屋建設 代表取締役 鈴木 優一

「仕事ができる人より、教育できる人が一番上」──三代目が建設ディレクターとAI活用で、人が育つ会社づくりに挑む

代表取締役鈴木 優一

公開 取材・文 ローカル文庫 編集部

この記事について

会社
株式会社板屋建設
所在地
静岡県
話を聞いた人
代表取締役 鈴木 優一
公開日
2026.10.23
聞き手
ローカル文庫 編集部

株式会社板屋建設とは?

株式会社板屋建設は、土木工事などを手がける建設会社です。お話を伺った鈴木さんは三代目で、従業員は技能実習生を含めて24名ほどの会社を率いています。

鈴木さんは中学生の頃から家業を継ぐつもりで技術を学び、土木工事の建設会社で6年間、現場監督として働いたのち、27歳で家業に戻りました。現在は現場監督の事務作業を引き受ける「建設ディレクター」の導入や、完全フレックスの就業体系、LINE WORKSとGoogleフォームを組み合わせた社内のIT化など、新しい取り組みを進めています。

取材では、家業に戻った経緯、働き方の工夫、採用が実った先に見えてきた「教育」という課題、そして若い世代へのメッセージを語っていただきました。

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家業を継ぐまで

Q 学生時代から、建設業を継ぐことは考えていましたか。

A 中学生の頃からですね。家業でしたので、毎日見ている中で、反発もしながら、継ぐことになるんだろうなと思って、そちらの方面に進みました。そのために技術者になるための勉強をしてきました。

Q 一度、外の会社で働いてから戻られたのはなぜですか。

A 技術的なことを勉強すると、どうしても職人ではなく現場監督に憧れるんです。自分もそうで、現場監督の仕事がしたくて、普通に就職活動をして土木工事の建設会社に入りました。 そこで6年間働いて、国家試験もだいたい取り切って、「さあ、これから」というタイミングでした。

そこから恩返ししなきゃいけないという思いもあったんですが、家業に戻らざるを得なくなりました。ちょうどその時期に結婚も住宅の購入も重なっていて、だいぶメンタルは辛かったです。専門学校卒でしたので、27歳で家業に戻ってきました。

Q 続けてこられた建設の仕事の魅力は、どこにありますか。

A 建設業も製造業と同じで、ものを作って、形が残っていくところです。土木工事であれば、水路は雨のときにきちんと水が流れますし、世間の一般の方が利用するインフラになります。そういうものを作っていくのは、やっぱり嬉しかったですね。

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建設ディレクターと、働き方の工夫

Q ホームページで拝見した「建設ディレクター」とは、どんな役割ですか。

A 言葉自体は、京都あたりが発祥だと聞いています。これまで現場監督は残業が非常に多く、月100時間なんてざらという業界でした。残業時間の上限も規定されて、働き方改革をしていかないといけない中で、バックオフィスが現場監督の仕事のできる範囲を引き受ける、という考え方です。

そうすると、現場監督は日中に現場を回し、夜にやっていた書類仕事をいくらかでも減らせます。知ったのは、京都で団体の式典の場で来賓の方が建設関係の話を聞いたときでした。

Q 地域の建設会社では珍しい取り組みだと思います。情報はどこから得ているのですか。

A 私は同業の中だけで生きているのではなく、JC(青年会議所)のような異業種の場にも出ています。 同業と同じ比較ではなく、異業種も含めた時代の流れに乗ろうと思って、会社の中もいろいろ改革しています。

生き残りをかけたときに、業歴や経験値では、どうしても老舗の会社にかなわない部分があります。違いを出さないと人も集まりません。現場監督の給料が爆上がりしている中で、事務の社員が現場監督と同じ職務を一定程度こなせれば、経営面でも光明が見えると考えています。

A 就業カレンダーも一律ではなく、現場、事務、営業の3タイプに分けています。事務はコアタイムなしの完全フレックスです。そうすると人も集めやすく、モチベーションも高くなるので、メリットは大きいですね。

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採用が実った先の課題は「教育」

Q 採用面では、どんな状況ですか。

A 昨年は求人活動にかなり力を入れました。人材不足は会社の倒産にもつながりますので、なんとかして人を集めなければと思って。今年の2月には、東京で働いていた24歳の方が、地元に帰りたいと入社してくれました。 異業種を2つ経験した未経験者ですが、モチベーションが高く、よくやってくれています。求人媒体を見て応募してくれて、面接から一週間で来てくれた形です。

高卒の新卒の事務社員も入ってくれて、いい子たちが来てくれたので、うまく育てていかなきゃいけないなと思っています。

Q 次の課題は何でしょうか。

A 教育です。長い間、人の移動がなかったので、仕事はできるけど指導できない人ばかり、という状況でした。中途採用が基本でしたが、昨年は未経験者も排除できないくらい門戸を開いたので、今年は仕事を知らない人に仕事を教えるところからが多い一年になります。

人事評価を作るときにも言われたんですが、自分で最高の仕事ができる人より、人を育てられる人が一番上だと。本当にそうだと思いますが、実際にやるのは難しいですね。

そこで、事務の社員の上司を営業社員ではなく総務に置くなど、組織を作り変えています。外部講師にも来てもらいますし、年間契約で研修や教育動画も使っています。静岡イノベーションベースという団体にも今年の3月から参加して、勉強させてもらっています。

手作りの社内IT化とAI

Q AIやITは、どのように使われていますか。

A 報告書をコロナの時期に紙からGoogleフォームに作り変えたんですが、これがAIとの関係がすごくよくて。Claude Codeをいじりながら、LINE WORKSにボットを作って、通知やスプレッドシート、Googleカレンダーと連携させています。 たとえばアルコールチェックの報告をウェブフォームで上げると、LINE WORKSに通知が届いて、実施履歴がすぐ見られる。点検表も同じです。

これで管理職がきちんと管理職の仕事ができるようになり、上がってきた報告をちゃんと見る、というのが教育のスタートになります。独学でやっていて、少しずつできてくると楽しくなって、いろいろ作ってしまいます。

出退勤もコロナ前からスマホのアプリで行っていて、GPSでどこで出勤・退勤したかもお互いに分かる状態です。

会社のこれから

Q 会社としての今後の展望を教えてください。

A 去年は「思いっきり売上を伸ばすぞ」と言っていたんですが、教育の壁にぶち当たりました。 今は、その次にジャンプするために力を貯めている段階です。一旦は採用よりも教育に専念して、社内の体制を整えます。

今ブルーカラーの仕事が見直されていますが、大卒の人が今の建設現場の教育環境で続けられるかというと、難しいと思います。教育が整わないと、受け皿ができないと思うので、現場だけでなく施工管理も営業もあるうちの会社で教育をうまく作れれば、そういう人たちも受け入れられるのではないかと考えています。

若者へのメッセージ

Q 最後に、若い世代へのメッセージをお願いします。

A Z世代と言われますが、一括りにはできず、一人ひとり全然違うと思っています。うちで働いている19歳の子たちは、正月休みでも働いていいよ、というくらい、働くことが苦でない子もいます。もちろん冬季休暇はあります。

いい言葉が思い浮かびませんが、いい社長に出会うことですね。自分がどうかはさておき、どんな人とどんな仕事をするかが、心の豊かさをもたらして、プライベートの充実にもつながっていくのではないかと思います。休みが年間120日以上ないと嫌だ、ということではなくて。

取材担当:島田の感想

地域の建設会社でありながら、JCなど異業種の場から建設ディレクターを知り、社内のIT化まで自分で手を動かしている姿勢が印象的でした。採用に成功したあとに「教育」という次の壁が現れる、という話は、同じ日に取材した別の会社でも聞いたことで、採用の先の課題の大きさを感じました。「教育できる人が一番上」という評価の考え方も、学生にとっては会社選びの視点になると思います。休みの日数だけでなく「誰と働くか」を大切にしてほしい、というメッセージを、そのままお届けしたいです。

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