有限会社ぴゅあアート技術 前代表(二代目社長) 奈良 大氣

「好きなこと」しかやってこなかった。鹿角で多角経営を続ける会社のかたち

前代表(二代目社長)奈良 大氣

公開 取材・文 ローカル文庫 編集部

この記事について

会社
有限会社ぴゅあアート技術
所在地
秋田県
話を聞いた人
前代表(二代目社長) 奈良 大氣
公開日
2026.10.23
聞き手
ローカル文庫 編集部

電気工事士に3回落ちた少年が、東京でシステムの道へ

秋田県鹿角市に、デザインや広告、システム開発から行政施設の管理、さらには音楽フェスの運営までを手がける会社がある。有限会社ぴゅあアート技術。その中心にいるのが、奈良大氣さんだ。

奈良さんのキャリアは、まっすぐな一本道ではない。もともとは電気が好きな少年だった。

「電気関係に興味があって、高校も電気科に入ったんです。電気工事士を取りたいなと思っていたんですけど、実技が結構難しくて。3回くらい落ちてしまって」

丁寧にやりすぎて時間内に終わらない。そういうタイプなのだという。合格率だけ見ればそれほど難しい資格ではない。それでも苦手なものは苦手で、3回落ちてからは一度離れた。それでも「好きなことは好きなので」と、いまでも近いうちにまた挑戦しようと思っている。

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ベンチャーで働き、独立し、地元・鹿角へ帰る

高校では電気を学びながら、バンド活動にも打ち込んでいた。音楽も、運営の仕事も続けたい。当時それをやるなら東京だった。だから就職活動はせず、高校卒業と同時に東京へ出た。

趣味で触っていたシステム開発が、そのまま仕事になった。あるベンチャー企業でシステムエンジニアとして働く。その会社はいまや社員50人を超える規模に育った。

「ずっとシステムをやっていて。他にもいろいろやりたくなって、独立したんです」

個人事業主として独立し、さまざまな仕事を手がけるなかで、いまの奥さんと出会った。一方で、父が地元の鹿角で会社をやっていたこともあり、いずれ帰るつもりではいた。独立して10年ほどが経った頃、「そろそろ帰ってこい」と声がかかる。当時付き合っていた人に一緒に来ないかと聞き、断られて別れ、一緒に帰ってくれる人を探して結婚した。奈良さんは笑って「当たって砕けろな生き方をしています」と振り返る。

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デザインと広告の会社に、ICTと「指定管理」を足す

奈良さんが継いだぴゅあアート技術は、もともとデザインや広告、看板づくりを中心にした会社だった。父が音楽をやっていた縁で、イベントの音響・照明の仕事も手がけていた。

そこへ奈良さんが入り、自分の得意なICTやシステム、レコーディングの領域を足していく。なかでも大きな転換点になったのが「指定管理」——行政の施設を預かって運営する業態への進出だった。

「最初に取った施設が、練習室や音楽ホールのある施設だったんです。うちの業態とマッチしていたし、元々管理されていたところが、それを生かしきれていなかったので。うちがやった方がいいんじゃないかと思って」

いまでは最初の施設に加え、二つ隣の市でもう一つの施設を管理している。施設に含まれるレストランの運営も担い、そこでは地元のパートの人たちが働く。全体で約20人の会社だが、20代は2人だけ。50〜70代が半分以上を占める。

「個性豊かな人が集まっている。変わり者が集まっている集団、という感じですね」

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市の選挙に出て、落ちた。それでもまちに関わる

奈良さんは一時、会社の代表を務めていた。だが、市の選挙に出るために代表を降り、立候補した。きっかけは、まちが揺れていたことだった。談合やパワハラをめぐる混乱が続き、「次に誰を」と話し合うなかで、入れたいと思える人がいなかった。それなら、と自ら手を挙げた。

結果は落選。少し前に選挙に出た奥さんは当選していた。それでも奈良さんは、淡々と地域に関わり続けている。

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クロマンタロックフェス——音楽で、まちを盛り上げる

いま力を入れている新しい取り組みが、音楽フェスの企画だ。「クロマンタロックフェス」。11月1日、鹿角市の道の駅にある屋外ステージで開催する。芝生が広がり、すぐ近くには温泉郷と、世界文化遺産にも登録された縄文のストーンサークルがある。

「他の会社が来てフェスをやることもない。地元の会社が主催したこともなかった。音楽の盛んな街なので、音楽で地域を盛り上げたいなと思って」

つじあやのさんらが出演予定で、目標は2000人。宣伝に奔走する日々だ。デザインも広告も音響も、会社がこれまで積み重ねてきたものが、そのまままちの祭りに注ぎ込まれている。

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若い人へ。「好きなこと」で選べばいい

奈良さんに、やりがいを聞くと、答えはシンプルだった。

「自分の好きなことしかやっていないので。好きなことができるから、いいですね」

高校を出てすぐ東京に飛び出した奈良さんは、いわゆる就職活動を経験していない。だからこそ、就職を控えた学生にかける言葉には実感がこもる。

「身構えず、気楽にやったらいいのにと思います。やりたいことが見つからないなら、好きなことをしていけばいい。漫画が好きなら、漫画の知識量で日本一になれば、それだけでコンテンツになる。好きなことには、もっと知りたい、できるようになりたいという欲があるはずなので」

給料の高さで選ばれる会社ではない、と奈良さんは正直に言う。田舎では人が集まりにくい。それでも、動画もシステムも広告も、田舎で見れば技術力の高い部類に入る会社だ。

「やりがいで選んでもらうしかないですね」

電気、音楽、システム、まちづくり。いくつもの「好きなこと」をつないできた先に、鹿角のなんでも屋のような会社がある。

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